話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

  • 2018年1月1日から12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から10選定。
  • 1作品あたり1話
  • 順位はなし

なお、タイトルあいうえお順
投稿日が12/28なので実質そこまで

01.アイカツスターズ!「お正月だゾ☆全員集合!」

この投稿のためにあらためて見直しをした。 お正月モノを年末に見ると、また一年が過ぎてしまったな、という感慨が生まれる。
ゆずちゃん先輩の魅力が詰まった一本。
動きはダイナミック。元気。頑張り屋。
日曜の昼くらいにやってたアイドル学園ものパロディも結構好き。
ゆずリリの関係性も見所。アイカツスターズ!の楽曲だとSTARDOM!が好きなのだけど、「憧れは次の憧れを生む」という歌詞が、ゆずとリリィの関係に見える。美しい。


02.SSSS.GRIDMAN(グリッドマン) #03 敗・北

正直、まだ咀嚼途中で、評価をどこにおいてやればいいのか分からないそんな作品ではある。
1話の劇伴の使い方、説明が適度に少なく静かでありながらちゃんと表情含めて押さえてくるのはやはりエヴァあたりが念頭にあるのか。
「パキパキとしたソリッドな感じのアニメーション」とでも表現するのがいいのかもしれない。
物語の仕掛けも興味深いし、キャラクターもあざと可愛い。
ボイスドラマの六花にしゃべらせるセリフが本編と違って生々しい女子高生っぽさが出てるのもリアリティ("リアル"ではない)を前面に出しているのかもしれない。
(実は上記の文は最終話前に書いていたのだが、最終話を見てまで見て、「リアルではない」に別の意味が生まれてしまったな、と思った。元が特撮であることの強い意味が生まれていた)

特撮のグリッドマン自体は幼い頃に見ていた記憶はあるが、話の筋は覚えていない。
人によっては、特撮版は生まれる前に放送されていた人もいるのだろう。
そのうえで特撮版を遡って見た人もいるのかもしれない。そうやって探りたくなる仕掛けも上手い。
私は特撮に対する造詣が少ないが、それでもパロディ含めて特撮やアニメといった文化がすごく好きな人が書いているのだなというのは伝わってくる。

どの話数も面白いのだが、3話を推したい。
特撮なのかアニメなのかというので、アニメっぽい気持ちよさが3話に出ていた。
画面全体、怪獣の吹き飛び方などに重量を感じる作りになっているが、特に3話はMAX GRIDMANが殴りにいくシーンの重みが強く出ている。
キャリバーさん周りのアニメーションの気持ちよさも際立っている。
女性キャラクター人気がインターネットでは目立つが、サムライキャリバーさんやアンチくんと言った魅力的なキャラクターがその片鱗を見せるのが3話というのもある。


03.軒轅剣 蒼き曜 第七話 錯綜之念(さくそうのねん)

台湾のゲーム軒轅剣シリーズのアニメ版。
スタッフは日本人。中国の物語文法が少しずつ感じられて良作。
実は1話や10話も選ぼうとしていた。
1話のよさは、開始直後の劇とか、主人公殷が宙に浮くシーンがすごくて、まるで糸で吊られているようでやはり劇を意識しているのかな、と思った。
ソースを失念したけれど、アメコミだと、超常の能力を得た人間は目が光る表現が使われることが多く、日本の漫画だとオーラのようなものをまとう表現が良くある、そして中国の超能力表現として、(舞台技術のように)宙に浮くというのがあるとどこかで読んだ記憶がある*1。 それが念頭にあって、見た瞬間に「これは糸で吊るのを意識しているぞ」となった。

中国の物語を読んでいると、人命に対する感性が少し違うらしく、封神演義安能務 訳)であればパカパカ頭を割られて死ぬシーンが多かったし、意地の悪いキャラクターの運命などについても凄惨とも非業とも呼べるような死を迎えることが多くて、この軒轅剣においても同じような感性の違いが見られる。
1話で龍澄に手を挙げた部下があっさりと首を斬られているのも中国の物語に感じる。

7話に話を戻す。
物語の面白さのひとつの方向として、登場人物たちひとりひとりが悪意を持っていないにもかかわらずそれぞれの思惑がすれ違ってしまうことがあるが、7話はタイトル通りでまさに錯綜だった。
そして物語自体が後編に向けてぐぐっと転換するタイミングでもあり、これはぜひ見て確かめて欲しい。

なお10話、近年まれに見るつらいアニメーションだった。
忘れた頃に差し込まれる雫のシーンが、ずっと耳に残る上手い設計だ。
これは軒轅剣全編を一気見してしまうとたぶんあまり感じ入ることはないだろう。
10話は見終わったあと時間を空けてから11話に移ってほしい。

最終話、それぞれがなにを望んで動いてきて、結果的に得たモノと失ったモノとを見比べたときに「どうしてこうなってしまったのだ」という気持ちと、彼ら彼女らの幸せについて考えてしまった。
天命に翻弄されるのもやはり中国の物語ゆえか。
あと、個人的には、2.5次元軒轅剣を待っています。


04.少女☆歌劇 レヴュースタァライト 第10話 されど舞台はつづく The Show Must Go On

近年(いつ?)、アニメ業界において舞台の重要性が増している。
円盤売り上げが少なくなっている分を補うべくなのか収益の枠組みが変わりつつある。
たとえばソシャゲへの導線が目立つのだが個人的に興味を持っているのが声優や俳優を使った舞台である。
アニメ作品を人が演じることで虚構と現実が溶ける瞬間が生まれるのかもしれない。

今回挙げたのは10話。
適わないと思いながら努力するその姿が好きで、たぶん自分がそういう才能というものを持っていない、という確信があるからこそ、舞台少女のきらめきに私自身が惹かれているのだと思う。
私も、観客としてキリンとして、舞台に立ち続ける少女たちを眺めていた。
アニメを見ていながら、舞台を見ているような気持ちになり、また舞台を見た人は舞台の記憶も混ざって複雑な感情になる。キャラクターへの共感も混ざりもはやよくわからない感情になるのだった。
これも第四の壁の壊し方なのだろうか。


05.宇宙よりも遠い場所 STAGE12 「宇宙よりも遠い場所

すべての話数を一つ一つ10選として挙げたい作品だった。
まだ他の人の10選を見ていないが、多分今年のこの企画で一位二位を争うものと言えばきっとSTAGE12「宇宙よりも遠い場所」だと勝手に思っている。
などといっていたら The New York TimesのBest TV Shows of 2018で海外部門を受賞していたようで、なるほど強かったのだなとなった。
「よどみの中で蓄えられた力が爆発して、全てが動き出す」
という1話冒頭のナレーションが、深く沁みていたからこその12話だったか。
挿入歌の使い方も本当に上手い。
ガシガシと刺してくる作りで、毎話泣いていたと思う。
この秋になってからいろいろな制作者のインタビューを見て、30代の男性すなわち私がしっかりとターゲットになっていたことが分かったのをどう受け止めて良いやら。
日向大好きなんだけれども好きなキャラクターの方向性がモロに分かる。


06.ゾンビランドサガ 【第9話】一度は尽きたこの命 なんの因果か蘇り 歌い踊るが宿命なら 親友への想いを胸に秘め 貫くまでよ己の SAGA

2018年の終わり頃にまたずいぶんと強い物語が出てきたな、という感じだった。
アニメ聖地の町おこしは一時期消えたと思っていたけれど、丁寧に組んだ物語はやはり人を引きつける。
物語に対する愛?真摯さ?そういったものの片鱗が見えることが嬉しいのだと思う。
ゾンビランドサガは、ゾンビじゃないと成立しない物語と、アイドルでないと成立しない物語の両方が上手く組み合わさっていた。
巽の阿呆な演技にゲラゲラと笑っていたらいつの間にか世界に引き込まれているという構成も強い。

1話の時点で、生き返ったとしたら知ってる人も出てくるだろうと思っていたが、8話段階ではゾンビになって人が甦ることがアニメ世界内ではあり得ないこととされているリアリティにいまいち納得できなかったけれど、9話のゾンビだからできること、ゾンビだから再び死ぬことなく戻ってこられる、そしてそれが当時できなかったことの再現になっていることまで見て、この物語は強いなと思った。
7人の個別回を1期12話で回しきるのは難しいのだろう、割り切りが見られる構成だった。
全員分出さないことで二期や劇場版も視野に入ったのかもしれない。
二話もあのラップで直前までは候補だったのだが、私が2号推しなので個別回の9話を。


07.ポプテピピック #07 ヘルシェイク矢野

アニメか?という突っ込みはあろうが、とにかくすごいモノを見た、という気持ちになった。


08.ヤマノススメ サードシーズン 十話「すれ違う季節」

もはや安定して見ていられる。
スタッフが我々を「裏切ることはないだろう」という信頼がある。
サードシーズンは、全体を通じてすれ違いを丹念に描いていたが、やはり一人作画の驚異もとてつもなかった。
少人数での作画になると、その手触りというかその人らしさが前面に出てきてとてもよい。
なので二話と迷ったのだが、十話の「すれ違う季節」を推す。
ひなたの寂しさが、画面の端々から感じられ、また、電車内の「ゆり」のカバンを持ち直す仕草や直前の手が揺れている作画に、生き生きとした様子を感じた。
そして後半の中心となるすれ違いの疑念の生まれ方。
あ、百合だ、そんな気持ちになる話数だった。


09.ゆるキャン△ 【第5話】二つのキャンプ、二人の景色

山梨の空気が感じられる、美しい物語だった。
一話ごとぐらいにキャンプと日常を行き来する構成がまさにゆるいキャンプという感じでいい空気。
OPのリンちゃんが少しずつ打ち解けていくちょっとした仕掛けもよかった。
3話のラスト、なでしこを呼ぶリンちゃんにやられてしまったのだが、

この独特の距離感が、しっかりとまとまったのが5話の夜空だった。
遠い空の下、それでも確かにつながっている。これが2018年の距離感なのかなとそんなことさえ思った。


10.若おかみは小学生! 第10話 「二人は親友!?若おかみ」

今年は映画「若おかみは小学生!」の話題を良く聞いた。
パジャマ姿のおっこがめちゃくちゃ可愛いのだけど、twitterで言及している人が少ないので特殊な見方をしているのだろうな、という気持ちになっている。
それでも、映画版と比較する形でテレビ版の考察をする人が多かったのでそれはそれで。
テレビ版、9話10話のピンフリがめちゃくちゃ可愛く、また20話のおっこがめちゃくちゃ可愛いのでとにかく全話見てもらいたい。
9話は登場時にテレビのこちら側で本当に、こう、撃ち抜かれたという表現がぴったりだった。

実を言えば昔からテンプレなキャラクター造形を敬遠してきた気持ちがあるのだが、 最近は「金髪ツインテツンデレもいいじゃないか」とおおらかな気持ちで見ることができるようになり、 ピンフリも、努力するお嬢様でツンケンしているけど心根が優しい様子でコロリとやられてしまった。
我ながらちょろい。
しかし話数としては10話を挙げる。
真月の芯の強さがラストに掛けてちゃんと見えるのがいい。



途中にも書いたが、アニメーションの生き残り戦略に多様性が増しているように思う。
テレビ配信ではなくインターネット配信しかり、音楽や部隊を含めたマネタイズを模索することも増えた。
海外でアニメスタイルストーリーテリングが広まるに従って、配慮も増えるものであるというのがNETFLIXなどから見えてくるところである。
文化は、いくつかの障壁によって分断され、その中での先鋭化することで特異なものとなり、時間を掛ける過程で文化としてより強固なものになっていくのだと思う。
こうしてアートスタイルが世界に広がっていくことがどういう変化になっていくのかは見守りたい。
スタイルとしての特徴を考えると、2018年は構成を強く意識した年だった。
一回こっきりの要素で毎週の視聴と考察を促して、SNSを介して人を舞台やコンサートへと導く仕掛けがよく見える気がしている。

選外でありながらよかったものをいくつか
- 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない 第8話 大雨の夜にすべてを流して→消える、の表現はSSSS.GRIDMANなどでもあったけど、余韻の残し方が難しい。これは道具を上手く使っていた。
- はねバド! 第2話 運動の後の肉は格別ッス!
- りゅうおうのおしごと! 第七局 「十才のわたしへ」
- ソラとウミのアイダ 9話 「浴衣でラクしい夏休み!」
- あかねさす少女 5話 「ヒーローの条件」
- LOST SONG 第12話 「始まりの歌」→正直なところ飛び道具だけど、リアルタイムでアニメを見る価値のひとつは間違いなくああいったところにある。

*1:20181230 少し反応があったので追記。ソースとまでは呼べない傍証くらいのものだが、 http://www.cinemart.co.jp/article/news/20160311000526_2.html 仙、神、妖、魔、鬼だから、飛べるのが当然! 飛べないのは人間だけです! と言うしかありません。実は、古くから伝わってきた中国の伝説の中で、仙人や神は雲の上に住んでいるので、出入りは飛ぶのが当然なことです。