読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

2016年1月1日から12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から10選定。
1作品あたり1話
順位はなし(あいうえお順)

01.アイカツスターズ! 第29話「本当のライバル」

 昨年はアイカツよりプリパラという感じだったのだが、今年はどちらかといえばアイカツだった。
 どうも夢破れたり努力がから回る表現というものに弱いところがある。
 ローラがライバルであるゆめに対して大事なステージ前に食べ過ぎないようにと注意したり(実際ゆめはひょいと間食するシーンがある)、ひとり練習をし、衣装もこだわるといった努力を人一倍しているにも関わらず不思議なステージの才能を発揮するゆめに負けてしまう。
 自分の個性を大事にすることを先生に諭され、ゆめにこれから本当のライバルになる、と宣言するその強さが胸を打つ。そしてその心の機微を読み取る真昼という役回りもまた美しい。小春が明確には気づいていないもののなにかを察知しているのも良い。
 ただ、ローラはこれで自分の個性をすぐ見つけるわけではなく、そこから4話「迷子のローラ!?」まで悩み続けることになるのも中学生っぽいリアルがある。
 つらつらローラについて書いたが私が一番好きなのはゆずちゃん先輩です。

02.灼熱の卓球娘 「第三球 好きっ!!」

 OPがたいへんキャッチーでたかだか1分半の間に目まぐるしく曲の印象が変わる。そのうえ時おり差し込まれる本編のセリフがとても格好いいので盛り上がる。たいへんよい。
 キャラクターはどの娘も可愛いのであるが、全体的にキャラクターが上気していてエロティックなうえにラケットのスイートスポットを「気持ちいいところ」と表現しているあたり意図的にエロティックである。しかしまあ、単なるエロいアニメではなく、遠くからの絵では卓球の様子がよく動くし、熱い展開も多い。
 急に現れた転校生のこよりが、一番にこだわっていたエースのあがりに勝つまでの1話から3話、あがりがこよりを避けようとしたり、自分の地位やこだわっていたことに対する焦燥に痛いくらい覚えがある。
 3話で素直になれたあがりの笑顔は、ほんとうに美しかった。
 6話の、ほくととハナビのエピソードを見ると、1話のほくととハナビが互いを思っている様子が見えてとてもよい。

03.昭和元禄落語心中 「第十話」

 暗い美しさというのは確かにあって、91Daysなんかも近い暗さがあったけれど、この10話のエピソードに流れていた暗さはほかではなかなか見ない。師匠が亡くなって最初の演目の選び方に見える業も、それを演じたのちに出てくる菊比古の孤独も、暗くて寂しくて、孤独というよりもはや孤高という表現が一番近いのかもしれない。
 声優という職業のすごさをまざまざと感じさせたアニメで、助六も菊比古も大ベテラン声優さんが声を当てている。落語家も声優と同じく、声の演技を仕事にしているからこそ、この役を演じるには落語家に対する深い尊敬と対抗心みたいなものがあるのだろうか、と思っていた。

04.タイムトラベル少女〜マリ・ワカと8人の科学者たち〜 第10話「ヘルツの誇り」

 そもそもいろいろ不思議なアニメで「この物語はフィクションです。ただし、科学史に関わる内容は歴史的事実に基づいた表現を心がけています」というのが面白い。
 マリちゃんもワカちゃんもすごくかわいいし、勉強にもなるしでとてもよいアニメだった。
 各回よく練られているのだけど、その中でもハインリヒ・ヘルツの回を挙げる。
 ヘルツは、光電効果の発見や、電磁波の空間伝搬の証明から無線技術の基礎を作った人物である。
 史実のほうでは自身の仕事の実用性についてあまり理解していないようであったようで、いくぶんその仕事に自尊的な意味での価値を見いだせていないところもあったようだ。
 アニメの中では、その嘆きを掬いとる様子が見えていた。
 実際にそうであったのかはわからないが、ヘルツが失意の中で死んだというのではなく、少しの希望を与えることにしたのは美しい判断だったように思う。

 夏頃、科学技術館でタイムトラベル少女とコラボした電磁気実験がイベントとして開催されていて、参加者(小学生に限っていたように思う)にタイムトラベル少女のクリアファイルを配っていた。そのクリアファイルは科学者・発明者のおっさんたち8人がプリントされているもので、誰得だろうという印象もあったが、アレは小学生男子にとっては女の子が描かれているピンク色のクリアファイルは厳しいという配慮であったのかもしれない。

05.とんかつDJアゲ太郎 「#08 EDMの貴公子降臨!」

 一発ネタのようでその実しっかり作りこまれておもしろい、というのは「面白い物語」のパターンである。近頃の異世界召喚物語でもよく見る。
 そういう中でちょろっと挟まれる人情ものという構造に弱く、それがこのエピソードだった。
 韓国出身のDJイー・ドンミョンに対するリスペクトを、ポンチャックという韓国の音楽で表現することと、そのイー・ドンミョンの思い出に触れること、そしてアゲ太郎が自分の感じるグルーヴを信じること、それらが合わさることでぐっと胸に迫るものがあったので選出した。

06.響け!ユーフォニアム2 第十回 「ほうかごオブリガート

 なんだかんだ2016年のアニメでこれに触れないわけにはいかない。
 2期では脇役を掘り下げることになる。それは物語世界を広げる効果を与える一方で主題に対するブレの原因にもなるので難しいと思う。
 2期を前半後半で分けるなら後半が好みの話の連続で、9話の職員室で鍵を渡す麗奈の足のカットもすごいものを見た、という気持ちになった。同9話では1期を通じて飄々とした印象の明日香先輩の心に少し触れることができた。11話の大吉山のシーンは1期8話のシーンを思い出させる美しさだった。映画「聲の形」でも強く感じたが邦画(実写映画)の雰囲気がある。
 しかしまあ、やはり10話の久美子の独白が本当によい。全体的に2期は黒沢ともよさんの演技に引き込まれた。主演女優賞があるならぜひ差し上げたい。それだけではなく9話であんな笑顔を見せてくれたのに10話ではぐりぐりと心をえぐってくる明日香先輩のいやらしさもよい。
 作画も、話の展開も、わかりやすいすごさというのは大きな武器であるなあと思った。

07.ふらいんぐうぃっち 第1話「6年振りの不思議」

 どのエピソードも大きな問題が起きるわけでもなく、かといって何もないわけでもない。
 ただ魔法使いの日常を描いているだけだ。魔法使いだからと言って、毎日が派手な冒険というわけではない(冒険を担っているのは主人公である真琴ではなくその姉だ)。
 それでも飽きずに見続けられるのは、作画や時間の使い方に丁寧さが表れていることから来るのだろうと思う。1話の千夏ちゃんの作画を見て(具体的にはチト(猫)が膝に飛び乗ったときの作画、階段を駆け下りる作画、真琴を避ける様子)、その挙動からこれは期待できると一気に引き込まれた。
 弘前では結構町おこしで使われているというが、どこを切っても安心安全なコンテンツであるからさもありなんという気はする。いや、実際のところ静止画はともかくアニメは、作画の丁寧さが妙な艶めかしさを伴っているので、アニメとして見る場合は安心安全とも言いづらいものがある。
 無限に流すことができるBGVとしても優秀。BGMもまた世界観にあっている。ARIAなどが好きな人はかなり楽しめると思う。

08.フリップフラッパーズ 第6話 「ピュアプレイ」

 個人的には問題作というか評価に困るアニメであったけれど、とにかくヤヤカを目で追ってしまっていた。
 6話がとてもよかった。5話とだいぶ悩んだ。
 この6話の良さは、あまり言語化したくない。

09.モブサイコ100 第11話 「師匠 〜leader〜」

 モブサイコ100は全体的にぐるぐるとよく動くアニメであった。動きを見ているだけでも楽しいが、キャラクターの魅力が大きい。
 特に霊幻新隆という人物は、口先ばかりの詐欺師であるにも拘わらず一定の倫理観を保ち続けている良いバランス感覚を持ったキャラクターだ。彼の魅力が詰まった11話では、超能力に対して(まだモブの超能力を信じていなかったにしても)体臭と同じで特徴に過ぎないと言い切ったことが良かった。師匠が師匠たるゆえんが感じられる言葉であった。また、超能力を敵に向けることに躊躇をしていたモブにとって「嫌な時は逃げたっていい」という言葉は救いだっただろう。ここでモブは力を発揮するのだろうかという緊張感と、発揮しないならどうこのピンチを切り抜けるのだろうと思わされたのちに強い引きを持って11話が終了し、最終話に至るシークエンスもとてもよい。


10.ユーリ!!! on ICE 「最終滑走 超超超がんばらんば!!! グランプリファイナルFS」

 勇利の思考が、私が追える思考からはちょくちょく外れているように感じた。共感しづらいと言い換えてもいいのかもしれない。そのため選外としようかとも思ったが、丁寧に丁寧に物語の仕掛けが組み上げられており、各キャラクターのスケーティング中のモノローグや、回を重ねるごとに洗練されていくスケーティングの作画と相まって最終話での勇利の滑走には強い感動を覚えた。音楽とのマッチングも素晴らしいものだった。
 ユーリの成長が見えたのも12話を推す強い理由である。

感想

 以上10選。
 秋アニメからの選出が多かった。確かにいいアニメが多かったけれど、どうしても新鮮さみたいなものが評価に影響を与えるような気がする。
 OPかED曲が好みのものが推薦されているように思うが、好みの物語だからOPEDを好きになるという気持ちもある気はする。
 全話視聴済み作品からしか選んでいない。作画のすごさについて断片的にあれがいいとかこれがいいとか情報は手に入っているものの、シリーズをすべて見ているわけでもないのにここであげるのもよくはないだろうと挙げていない。
 10選から漏れたほかの作品として、
・だがしかし
Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-
ドリフターズ
SHOW BY ROCK!! しょ〜と!!
SHOW BY ROCK!!
ステラのまほう
・ブレイブウィッチーズ
石膏ボーイズ
僕だけがいない街
ReLIFE
灰と幻想のグリムガル
ばくおん!!
石膏ボーイズ
・装神少女まとい
・想いのかけら  がある。

 今年はテレビ放送に比べてアニメ映画の方が印象が強く残った年であった。
 「君の名は。」はSF的には突っ込みどころもありつつ、新海誠氏のフェティッシュな表現や背景を堪能できた。
 「この世界の片隅に」も、とてもよい映画だった。精緻な描画の積み重ねからくる確かな存在感は、見終わってからがむしろ本番で、日常のふとした瞬間に映画を思い出してしまうことが多かった。呉のつながりでセーラーの万年筆を買った。きっとこれからこの右手で万年筆を握るたびにこの映画を思い出すだろう。
 「ズートピア」もたいへんよかった。男女、草食肉食、職務の立場における強弱がくるくると入れ替わるさまは本当に練りこまれたシナリオを感じさせた。
 また、中国資本のアニメが存在感を増している。
 今のところそれらのアニメで自分の好みのストーリーラインを持つものはない。
 それが私にとって面白くないものか、それともまだ論理展開がこなれていないのか、こなれたうえで私にとって異質な論理展開なのかの判別は難しいのだが、今のところはまだ論理展開がこなれていない印象は受ける。
手堅いバトルものが多いが、Bloodivoresにおいては、日本のアニメではあまり見ない構図の絵がちょくちょく差し込まれているため、この方向で洗練されるという独自進化もそのうち出てくるのだろう。
 霊剣山を見れば、展開される論理が日本における論理とは異なっていることに気づくと思う。今は違和感となっているこの論理展開も、そのうち癖になるのかもしれない。  これからも(日本経済の相対的な落ち込みを見ても)中国資本アニメの増加は今後も続くはずだ。
 なので2017年は海外産のアニメにも目を向けて行きたい。
 インターネット時代になってほぼリアルタイムに日本のアニメを見ることができる層が増えたせいか、もしくは90-00年代のアニメに影響を受けた作り手層が増えたせいか、いい意味で影響を受けた作品も増えているように見える。ところが海外で日本のアニメが早く見られる環境が整備されているというのに、逆に海外のアニメを配信で見ることができるサービスは少ない。本邦のアニメ配信サービスには海外コンテンツの拡充を願う。