2021年心に残ったアニメを話数単位で。


ウマ娘プリティーダービー Season2 第10R「何度負けても」

 ウマ娘の年だった気もする。いろいろなところで言及されているが、史実ベースでありながらキャラクター同士の関係などとても強い物語だった。
 トウカイテイオーあたりの話を、リアルタイムでは認識していなかったけれど、アニメの形にされて競バを通じて競馬のスポーツの側面に気づいた気がする。

オッドタクシー エピソード4「田中革命」

 3話のカポエラでだいぶ話に引き込まれていた。それまで対話シーンを面白くは思っていたけど、見方がよくわかっていなかった。
 カポエラのあたりで初めて「漫才っぽいな」と思ってあらためて調べてみたら、脚本にしてもキャラクターの声にしてもお笑いの流れがあることに気づいた。
 調べるほど興味深いなーと思っていたところに、4話がきてしびれた。
 惜しむらくは、youtubeの仕掛けに最終話後に気づいた点である。

かげきしょうじょ!! 第八幕「薫の夏」

 1クールや2クールのアニメでは、サイドエピソードの中に時々とんでもない短編が混じることがある。これがそれ。

最果てのパラディン 第2話「彷徨の賢者」

 あとで出る無職転生とはまったく別方向に丁寧。
 1クール12話のうち、3話に盛り上がりを用意する(いやいや、今どきは1話だよ)なんて議論とは無縁のように、主人公が冒険に出たのは5話が終わったところ。なんとまあ。
 2話は、通過儀礼としての洞穴探検と、育ての親の一人であるガスの目。
 なんとなく、自分が子供のころに見ていた、大人の世界の目線を感じる作品だ。
 どうやらまだ来年以降も続くようなのでじっくり見ていきたい。

スーパーカブ 第1話「ないないの女の子」

 バイクに乗りたくなった。小熊がアナーキーなようにも無頼なようにも感じるし、中二病のような背伸びも感じた。
 レトルトの食事をとる、一人暮らしの女子高生の図が、ドビュッシー「月の光」にすごくマッチしていた。
 後半に行くにつれ、付き合っていられないほどの無茶を感じたけれど、それでも1話は本当に美しかった。

無職転生 第16話「親子げんか」

 期待にたがわぬクオリティ。
 原作を読んだのは数年前なのでもう細かいところを忘れてしまったところもあったが、世界観は丁寧な描写、キャラクターも魅力。演出も美しいし、戦闘シーンなどの迫力もすごい。
 壮大な原作すべてをアニメ化するとなると、時間がいくらあっても足りなさそうだが、どうしていくんじゃろ。
 話の展開は、緊張と弛緩が次々来る。特に、何かに間違えたときの空気感にすごくおぼえがある、居心地の悪いファンタジーである。
 調子に乗って怒られるのは11話や16話あたりに出てきていて最高に緊張が強かった16話を挙げたい。

やくならマグカップも二番窯 第9話「澄んだ秋空の向こうに」

 丁寧な作品だった。心の動きに対する誠実さ、キャラクターたちの心の動きに(例外もあれど)肩ひじ張っていない等身大に感じる。
 二番窯の9話は、先輩の話を通じてプレッシャーに気づかされる流れが心に残った。

「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選」をやろうと思ったのだが、最近忙しいせいなのか心に余裕がないせいなのか、細かい心の動きを追わずにプロットだけ追っていることがたびたびある気がしている。感性の摩耗である。
キャラクターや話自体にそこまで興味をそそられないのに、話のオチを確認するために、あまり心躍らないと思っても見続けて最終的にながら見になってしまうこともあり、こんな調子で10選を選ぶことを、自分としては認められなかったので単なるまとめ記事として挙げる。
だんだん自分の中で、発表をするようなことに対するハードルが上がっている気がしている。クオリティは大事だが、そうして表現を止めるよりは少しずつでも表明していくほうが良かろうという判断もある。

自分好みの作品はだいたい1話目の時点で強烈に感じ入るものがある……ことが多いが、途中から風向きが変わってめちゃくちゃにハマる例外もやはりあるので、結局は見続ける必要があり無限に時間が欲しいと思うことがある。
ひとまずは、アンテナのほうがさび付いてしまっては入ってくるものも入ってこないだろうということで、毎日の仕事、睡眠、運動、食事といった基本的な生活をやっていくことがなによりも重要になっていくのだろうなと思った。

アニメーションを取り巻く状況がだいぶ変化している。
一時は中国が日本のコンテンツを置き去りにして独歩で進んでいくのかと思わされたがコンテンツへの締め付けが強まっていったためにその道はだいぶ後退したように見える。
Netflixが日本の市場を席巻するかも?とも思ったが、現場に金が回る仕組みが成立しているようにも感じない。
一方で、アニメコンテンツの売り上げは増加しており、いったいどう転んでいくのか興味は尽きない。

Ender Lilies感想

ネタバレありの感想。 Cエンドまでクリア。28時間程度。 公式サイトはこちら

ja.enderlilies.com

Bエンドまでは自力でやっていたが、Cエンドに向かう途中から攻略サイトを見た。 アーリーアクセス版の時に書いた感想は↓

ストーリー

目を覚ました白巫女の少女。黒衣の騎士や、彼女を守っていたシスターといった存在の霊を味方に、 崩壊した村や城を回って少しずつ謎を集めていくメトロイドヴァニア……という、まあ割と最近よく見るやつ。 自分が目覚めたところに帰ってくるイベントや、ラスボスの最終形態、二段ジャンプや空中ダッシュで移動できる範囲が増える感じなど、 基本的なところはきっちり押さえられているので安心感がある。

ただ、道中で霊を集めていくことになり、巫女自体になにも力が備わるわけではない、のが気になっていた。 白巫女ができることは増えているのに、精神的にはなにかが変わった様子は見られないからだ。色は変わっていったけども。 ストーリーを通じて主人公が成長しないのであれば、この子である必要があるのか?という自分のこだわりがあるのだと思う。

最終的にCエンドで、自身が「選んだ」感が出てきたのでこの点は解決したと思う。 Cエンドについては、各所にある「白巫女の願い」を集めて、泉の白巫女の穢れを落とすわけだが、 ただ、やっぱりこの行為自体、白巫女自身の願いと言うより、プレーヤーである自分の願いと重なっているような気がする。 あちらこちらの白巫女を見たことで、彼女たちが遺した思いを完遂させてやりたい≒ゲームの残った要素をすべて回収したい、といった感覚だ。 こういう第四の壁の越え方だと言えばそれまでかもしれない。 白巫女自身がアクションを起こしたのは、泉の巫女へ抱きついたあのアクションだけにも思えた。 主人公はプレーヤーの分身であるため、勝手なことをしないで欲しいという感覚も理解はできるので、ひとつだけのアクションに絞ったのはむしろ演出として英断なのかもしれん。

キャラクター

鈍器を振り回すシスター服の姉妹が出てきたので完璧です。 この二人のために最後まで走った気がします。 サブスキルである妹は片翼だし、メインスキル張ってる姉は双翼だし。

システム面

スキルについて、使い勝手に大きな差があったと思う。 この手のゲームでは仕方ないものではあるが。 メインで言えば、黒衣の騎士の剣が一番使いやすいのはいいとして、ゲルロッドのダウンを取るのが強かった。 ラスボスもこれがないと倒せなかったと思う。 全部のメインスキルできちんとクリアしたいので「穢れの残滓」が増えてほしいな、と。

一点、自分だけだと思うが肉塊を攻略できなくて苦労した。 肉塊の大きさが二つってのがピンときていなかったし、勢い次第で大きい肉塊を破壊できることを認識できていなかった。 おかげで、遺されているものを8割近く回収したあとに、さすがに「異端者のマスク」が取れないのはおかしいと思って攻略サイトを確認した。 いや、道中では大きい肉塊を破壊していたようだから、たぶん10人中8人くらいは気づくと思うので、私の落ち度だろう。 ちゃんと学習しながらゲームを進められなかったのだ。 割とセリフが排されているゲームなので、肉塊を破壊できなかったときに「もっと勢いがあれば……」などと画面に表示するべきか否かは結構難しい。演出と雰囲気をどう制御するかが世界観、ひいては没入感に影響するからだ。 しかし、一回こういう基本的な動作に見落としがあったときに、リカバリしづらいものだと思い直した。 結局、何度も同じ場所を巡っては「新しく手に入れたコレでも越せない壁なのか……」と割とフラストレーションを感じていた。 自分だったら、↑のように「もっと勢いがあれば……」みたいなセリフを書いちゃうだろうな、と思った。

一部の隠し要素を歯ごたえと見るか、そりゃわかんねーだろと見るか難しいラインのものもあったが、やりこみ要素だと思えばそこまで苦労することはなかった。隠れてる肉壁、肉塊はちょっとなんとかなってほしい気もした。 「暗部の一室」近くの「淀んだ汚れの残滓」については、タイミングがシビアすぎた。 最初に書いたとおり、その他の入っていてほしい要素はきっちり入っているのでストレスはほぼなし。

最後に

面白かった。雰囲気好きな人は楽しく遊べる。あとはレベルを上げきって実績を解除しようっと。

2020年春アニメ(4-6月期)OPEDメモ

なんだか今期のアニメは自分のツボに入る曲が多いな、と思ったので自分のメモがてら記録を行っておく。 そこまで音楽に詳しくない(ギターをたまにつま弾く程度)ので、知ってる範囲しか書かないつもりだがどこかおかしいところがあれば指摘いただければありがたい。

自分には、現在の1クールごとに変化するアニメは季節性を備えているように思えている。 春アニメのいいところは初夏の空気感であり、そこに向けた活動的な雰囲気が感じられると自分の中では評価が高い*1。 OPEDはそれを支えるひとつの要素なのだが、OPEDを飛ばさず見たいアニメはやっぱり心に残りやすいという傾向がある。

※あいうえお順


アルテ

OP「クローバー」 頑張る女の子の前向きな感じが強く感じられるOP 坂本真綾さんといえばプラチナみたいなところが自分の中にはあるのだが 曲の盛り上がり方がちょっと似ているように感じるのかもしれない。

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…

OP「乙女のルートはひとつじゃない!」 アニメ本編自体は、コメディ調で結構好き。 OPが劇場のような景色もありつつ、ミュージカル調もありつつで 各キャラクターの紹介の要素も成長込みでぽんぽんと見せてくれてとても面白い。 歌っているのがangelaさんなせいか、途中からアホガールファフナーに変わって行きそうな気もしてしまう。

かくしごと

OP「ちいさな日々」 ED「君は天然色」 姫の成長を感じさせるOPは、光を感じさせる色使いも、爽やかな雰囲気も、姫の夏服も、この季節にぴったりはまっている。 さまざまな青が美しいEDは、「君は天然色」の80年代の世界にあっている。 久米田康治さんはわたせせいぞうさんのようなイラストになって来た感じある。 緑と青がまぶしいのがこの季節なんだよな、と思い出させてくれる。 今期たぶん自分の中で一番好きなOPEDだと思う。

サクラ大戦 the Animation

OP「檄!帝国華撃団〈新章〉」 ゲームの方は手を出せていないのだが、初めて「檄!帝国華撃団」を聞いたときの思い出がよみがえる気がした。 ゲキテイと合わせて別パートになるという噂も聞いたが、 それができるならきっとアニメのラストにも盛り込んでくれるだろう。期待しておく。

波よ聞いてくれ

OP「aranami」 イントロのギター(エフェクト掛けてるけどギターだよね?)から、するりと入ってくるボーカル、時々挟まる高めの裏声が心地よい。 ラジオの現場もOPアニメーションのように切り取るとロボットアニメみたいな格好良さがある。 OPのあと、提供で少しボリュームが上がってフェードアウトするあたりもラジオっぽさがあってまたいい。

八男って、それはないでしょう!

OP「時空の迷い人」 デーモン閣下の声が爽やかで若々しい。これを聞くためだけにOPを見てしまうところがある。

BNA ビー・エヌ・エー

OP「Ready to」 ED「NIGHT RUNNING」 色遣いが全般的にお洒落でOPもEDもその点が心に残る。 OPの疾走感、時間的に短いのもあるが駆け抜ける感がサビにぴったり。さすがトリガー。 EDの色遣いもお洒落。スティーブンユニバースであるとかアメコミのような色使いとデフォルメ感。 楽曲の落ち着いたドラムがダンスミュージック的で格好いい。

プリンセスコネクト!Re:Dive

OP「LostPrincess」 当初はCMで聞いた記憶があり、結構耳に残る曲だな、くらいの印象だった。 いざイントロを聴いた瞬間、サクラ大戦っぽいな、と思ったら作曲が田中公平さんだったのでなるほどな、となった。 金管楽器の入り方がツボなので完全に掌で転がされている気さえする。

放課後ていぼう日誌

ED「釣りの世界へ」 ジャジーな雰囲気があって、イントロから引き込まれてしまった。 一方歌詞は釣りの楽しさをストレートに語るもので、素朴な感じさえある。 インストでBGMとして使いたいところがある。

LISTENERS

音楽モチーフのためだろう、BGMがすごく格好いい。まあいろんな意味でエウレカセブンを思い出す。 EDが今のところ毎回変わっているのだが、どれもいい意味で聞き流すのにいい曲ばかりで今後への期待も高い。 アニメーションは本編のリミックスであるが、これは新規カットもあるのだろう、すごく手の込んだ印象がある。 OPEDではあんまりピンと来ていない天性爛漫!とともに、アメリカンな空気を感じるBGMが結構好き。

また気になる曲が増えたら書く。

*1:コロナウイルスの影響もあり今年はどうにもその雰囲気を感じられなさそうではあるが

話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

  • 2019年1月1日から12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から10選定。
  • 1作品あたり1話
  • 順位はなし

なお、タイトルあいうえお順
投稿日が12/29なので実質そこまで


新米小僧さん、お疲れさまでした。 私はここ5年の参加なので古参とも新参とも言えぬ中途半端な関わり方ですが、アニメを見て感想を書くようになったのは確実にこの企画のおかげと思います。


01.アズールレーン 第8話【交錯】抱きしめて離さない

海や空、影、光の要素が綺麗な作品だった。 そのなかで、作画担当の人が炎上した8話を挙げる。 炎上自体は本筋ではない。個人的にはクリエイターに完璧な人格を求める気もない、あるいは求めるべきでもない、文脈を読んで納得する部分もある。とはいえ人前で言うことでもないだろう、というスタンスである。

アズールレーンに参加したアニメーター「どこまで手を抜けるかを追及した」 - Togetter

あんまり口に出すことではないけど、それはそれ、作品は作品。手抜きとは言うけど全体を見れば、最後のシーンのために他を削っているのはむしろ効果的な演出として機能しててすごい作画のように思ったよ。

2019/12/01 13:08

アニメは工業作品でありながら、芸術作品の側面もある。自分は、あの作画には感銘を受けた方である。 2019年にあれだけの作画をこなすのは天才の仕事だろう。 あの炎上の結末までは見ていないし追うべきでもないと思っているが、あれだけソリッドな絵と、豪快な動きを限られたリソースで表現しきったのはちゃんと来期になっても評価されると思うよ、私は。


02.W'z 第10話「DUDDY bUDDY riDe 《ダディ・バディ・ライド》」

正直なところ単体での面白さと言うより、ハンドシェイカーからの要素やその差分を高く評価している気がする。 ハンドシェイカーとくらべて、画面の構図や色合いにこなれたところがあるが、それでもしっかりと差別化できているアートスタイル。 格好いい大阪の街、前作よりも前面に出ているおしゃれな音楽も面白みのある要素。 前作での因縁が10年経ったことで、キャラクターの成長がいろんなところで垣間見えるが、 特に前作で突っ込みがちだったキャラクターに老獪さのようなものが見えてにやりとしてしまった10話を挙げたい。 お話は結構込み入っているので絵的にも話的にもちょっと疲れる作品のように思い、万人に勧められるものではなさそう。

公式サイトを見るとW'zは女性人気が高いのだろうか。


03.炎炎ノ消防隊 8話「焔の蟲」

環の演技も、絵も。全体の中で浮いてるというところもあるがラストの環の表情は何度も見直してしまう。


04.彼方のアストラ 第1話「PLANET CAMP」

自分がSFに対して評価が甘いことは知っている。それを抜いてもやはり面白かったと言える作品なんじゃないか。 宇宙で子供たちだけという空間が、十五少年漂流記などのジュブナイルの定番だし、11人いる!などのオマージュもある。序盤から散りばめられた不穏な空気も海法紀光だなぁ、と感じられるのもよい。 解決(というか改心)は強引にも思えるけど、それでも良いのだと思った。彼らの決断を認めたいと思ったのである。 アニメのオリジナル要素も良かったし、一話二話のスペシャル放送感、また1クールで完結する潔さも良かった。

アニメオリジナル要素を高く評価して1話を挙げる。


05.ケムリクサ 第11話

物語の情報の出し方、場面あたりの情報濃度、緩急、あるいはそのコントロールが抜群に上手い。 毎回毎回振り返ってみるとほんの少し冒険が進んだだけでしかないのに、背景にある絵などから状況を察することができてしまう。 多くの人と一致するであろう11話を挙げる。やはりEDの仕掛けだろう。強い引きも、クライマックスへのつながりも完璧だった。 りりの決断が、あるいは勇気が、自分の中で大きく大きく刺さっている。たった11話ED前の数十秒だけでもぐっと来るところがあった。


06.荒野のコトブキ飛行隊 第8話「大飛行船強盗」

SHIROBAKOに出てくる「第三少女飛行隊」がモデルか?という意見を読んでニヤリとしながらも本放送時にはスルー。秋の再放送で見て驚いた。

あまり語りたがらない作風で、骨太。ガルパンもそうだけど、もっと航空機について前提になる知識を必要としている気がする。 自分は詳しくないが、西部劇のオマージュが多いのだろうと感じた。

6話の遭難回も内省が美しく、ヨーロッパの映画でたまに見るような描かれかたで捨てがたかったが、8話を挙げたい。ガンカタがきっちり仕上がっているので目を奪われた。 2018年はプリンセスプリンシパルのちせ殿の剣戟に目を奪われ、今年はガンカタ。 やはりアニメーションは動いてなんぼと感じた(よく書いている通り動かさないことで得られる効果もそれはそれで好き) 主要キャラクターが3D CG、モブが手描きだったりするので、アニメ業界のコスト構造変化を考えてしまう。


07.川柳少女 第10話「七々子と蛍と肝試し」

ホラー回。たぶんタイミング含めてなにかホラー映画を参考にしているのではないか?というくらい完璧に引き込まれる。 他の話数では2話、11話あたりがよい。


08.ぱすてるメモリーズ 第2話「ご注文は?と言われても……」

ごちうな。

創作物世界のキャラクターが「私達の世界は、思い出と変わらない姿でいつまでも待っています。 だから、会いたいと思ったときに会えなくならないようにウイルスから世界を守ってください」と言っていたことで この物語が目指す結論に興味を持っていたのだが、 配信がなくなってしまった(BDは修正の結果どうなったか調査をしていない)ためにまったく説得力を失ってしまった。 それがあったからこそ自分の記憶に残ったのでありなんとも皮肉なことだけれど。


09.ぼくたちは勉強ができない 第13話「天才の目に天の光はすべて[X]である」

古橋周りのエピソードが自分のツボだらけなのでずるい(?)。「天の光はすべて星」のもじりであるタイトル、 天体というエピソードも、本人は自分の気持ちに対して無自覚なままというのも。 OPもEDも一期は二期よりキャッチーで気合いが入っている気がするのも毎週を楽しんでいたポイントかもしれない。 二期の11話も選ぼうとしたが、星空を二回も使うなんてずるい(?)ので。

アニメの最終話は一応はうるかエンドだったらしく、またそれで一部で盛り上がっているらしい。 個人的には明に言い切らず将来に託す匂わせの範囲だと思ったが、唐突感も感じるし、本誌での結末ではうるかエンドが潰えた可能性とも感じる(本誌は追っていない)。 アニメ版の落としどころといえばこんなものかもしれない。


10.星合の空 第2話

ちょうどこれを投稿したタイミングで、EDのダンスが無許可トレスだったことで炎上しつつあることに気づかずに書いてしまったやつ。 話自体は、個人的には好きではない。あまりに問題のある家庭だらけで、それらに対して、ほとんどやり過ごすだけに感じている。 立ち向かうシーンもあるが、そのとき問題になってるキャラクターが己を奮い立たせて立ち向かっているわけではない。中学生にできることなんて多くない。立ち向かい克己すること自体が夢で幻想で、本作はむしろリアリティがあるとも言えよう。

むしろつらさの真ん中にいる人たちに対しては、やり過ごすことの重要さも分かる。しかし、それが面白さとして受け取れるかは別だ、とは思った。 話の展開が自分の好みではないというだけで、たぶんこのアニメに救われる人もたくさんいるだろうとは感じる。

ソフトテニスの動きをあれだけ丁寧に描いてやばいと思わせたさらにその上があったのはほんとうに驚いた。 あの高揚感は間違いなく感動だった。

最終話が打ち切りエンドだったのがまたこの……。 続きがアニメなのか別の形なのか出てくれるとうれしいが。


今年はどうにも炎上に絡んだものを挙げてしまった10作品という気がする。 また、全話を見て気に入った作品の、好きになったきっかけの回を挙げることが多いということもわかってきた。 以下は選考に挙がった作品。 話数はとりあえず指定しない。

  • ダンベル何キロ持てる? OPもEDもかっこいいしかわいい。全編安定しているのもよかった。キャラクターの体型の描き分けがすごいし、SDキャラでも描き分けられているのでなおすごい。どれを挙げても全然かまわないハイレベル安定。強く引っかかる1がなかったので1話挙げるのが難しく、今回の趣旨からは見送りとした。
  • Dr.STONE 科学の徒であったため、やはり採用したいところもありつつ、ダンベルと同じく
  • 8月のシンデレラナイン 面白かったが、私が深く咀嚼するまで(したくなるような?)のフックが足りなかった。昨年の刀使の巫女でも感じたが、自分は深く咀嚼するにいたるためのフックが必要なようで、なんとなく年々そのハードルが上がっているような気もする。それは加齢によるものかもしれないし、忙しさに取り紛れて微小な変化に気づけなくなっているからかもしれない。
  • Re:ステージ! ドリームデイズ♪ 面白かったが、ハチナイと同じ。
  • 私に天使が舞い降りた! かわいいよね、乃愛ちゃん。
  • KING OF PRISM -Shiny Seven Stars- 「天然ガスが出たぁ!」でやられた。「沈まぬ太陽」のような政治がらみのストーリーはなかなか見ないことも心に残った理由である。
  • 私、能力は平均値って言ったよね! 佳作。コストがかかっていないけれど、そのリソース配分が秀逸。絵にしろシナリオにしろ、見せ所の配置が上手い。絵の使い回しもそれ自体ギャグっぽく写るのでよい。
  • ソウナンですか? 作品がやりたいことに対する真摯さを感じた。最終話の下品なネタも、生きるうえではしょうがないところなのかもしれない。品性では片付けられないところがあるのだろう。
  • 明治東亰恋伽
  • 約束のネバーランド 
  • コップクラフト
  • 女子高生の無駄づかい
  • ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-
  • 八十亀ちゃんかんさつにっき
  • 荒ぶる季節の乙女どもよ。
  • どろろ
  • 歌舞伎町シャーロック

中傷に対する反論とそのリスクについて

私は「放課後のプレアデス」という作品が好きだ。
物語の繊細さも、登場人物たちの決断の気高さも、美術も、それを裏打ちするSFもどれも素晴らしかった。
もっといろんな人に見てもらいたいという気持ちがある。

こういう、なにかのファンである者にとって、謂れのない中傷は気持ちの良いものではない。
もちろん、ツイッターなどを通じて作品がつまらなかったという人がそれを表明することは、仕方のないことだ。
どんな作品でも合う合わないはある。
どういう受け止め方や感想をする人がいるとしても基本的にはスルーしているのだが、感想を見た人が作品自体を誤解をすることは避けたい。
また、訂正すべき時に訂正しないことで誤解が広まることを避けたいという思いがありこの文を書いている。

https://togetter.com/li/1315551

あらためて書くが、単なるファンなので見聞きした情報は確実正確なものではない可能性がある。内部のゴタゴタも、あくまで流れを追っているいちファンの目線でしかない。

まず、「放課後のプレアデス」と当該の岸氏は無関係である。直接作品に関与しておらず、全12話のスタッフとして登場しない*1
では、どのような関係があるのか整理する。

参考にしたのは以下。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9
https://news.nicovideo.jp/watch/nw3961006
https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0418/ota_170418_5793368993.html
https://note.mu/r45shachou/n/nd4964fd5257e

2015年5月、株式会社神戸アニメストリートの社長である岸氏が、イベント参加会社に対して暴言・恫喝を行い、その後2015年の間に売り上げの踏み倒しが起きたという。
この記事では神戸アニメストリートでの問題行動およびその訴訟は本筋ではないので詳細はリンク等を読んでもらいたい。

一方、ガイナックスは、2015年4-6月放送の「放課後のプレアデス」を境に体制が変わっている。
放課後のプレアデス」が元請けとしては最後の作品で、それ以降は元請け作品はない。
2014年以降、京都市、神戸市、新潟市鳥取県米子市福島県三春町に支部を設立したというが、これらの会社に資本関係はないとされている。
2016年3月そのうちのひとつである神戸市の株式会社GAINAX WESTが設立した。取締役に岸氏が就任したという。記事中では時期不明である。

株式会社神戸アニメストリートの社長である岸氏が、売上金の踏み倒しをした後、株式会社GAINAX WESTにおいて取締役になったという。
資本関係のない企業で起きた問題にどこまで関わるべきかというのは一概に言えるものではないが、あまりできることは多くないだろう。
資本関係がなくとも名前を冠している以上道義的責任や監督責任があるべき、という指摘もあろう正直会社経営や法律に明るくないので、できることは少なさそうだ、という感想以上のものができない。
なんでそんな人物を取締役にしてしまったのか、脇が甘かったのではないかという批判はあると思う。
また、「資本関係がない」を信用してよいか、という話もあろうが、そこまでは私では判断が付かない。
おおむね関係がないことを分かってもらえればそれでよい。これでもいくらでもやりようがあったなら、その手段を今後のために教えてもらいたい。

こうして反論を試みること自体にリスクはあり、必死感がある厄介なファンがいると思われることが作品への評価にも繋がりかねない。それでも、好きで素敵な作品が誤解されるより一人でも同じ作品に触れて面白いと思ってくれる人が増える方に賭けたい。
反論のリスクとしては他にもHagex氏のように恨みをかう*2可能性もある。
攻撃的な批判者に正面から反論することは危険なのかもしれない。

煽りに反応すること自体が煽った者を増長させるところもあるが、「荒らしはスルー」という2ch時代とは違い、Twitterを含めたSNSではスルーしてよいときとそうでないときがある。
誤解が誤解を呼び、好きなコンテンツが誤解されたままになることはいろいろな意味で本意ではないのだ。
今回の発言は誹謗中傷の度合いが一定程度を越えたと判断した。

インターネットでは「刺激的な言葉を使うほど、読むに値しない」という判断基準を置いたほうがよいかもしれない。
人間の情動に訴えかける仕組みがあまりに強く、理性によって精査する前に行動に移ってしまうのは問題だ。
ファスト&スローで指摘されていたところである。

そもそも訂正記事や反論記事は、デマや刺激的な言葉・中傷に比べ拡散しにくい。
情報伝達の脆弱性と思う。デマはいいたい放題だが、それを訂正するコストはあまりに大きい。
今回「三流」といった分かりやすい中傷を伴っているから、外野の人にとってもどちらに理があるかも判断しやすい。
ただ、語句通りに「あの作品は三流だ」と思い込んでしまう人間は一定数いるはずで、それが広まってしまう可能性があるため大きくなる前にひと言言及しておきたかった。

20190205 まとめからは、流れと関係のない唐突なdisをしていたpostは削除されたようだ。 ひとまずはよかったのだろう。

*1:テレビ放送版のOPEDを再度確認した

*2:恨みをかう、は正確ではないのだが。あれはたまたま範囲に入ってしまったことが原因とは思う

話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

  • 2018年1月1日から12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から10選定。
  • 1作品あたり1話
  • 順位はなし

なお、タイトルあいうえお順
投稿日が12/28なので実質そこまで

01.アイカツスターズ!「お正月だゾ☆全員集合!」

この投稿のためにあらためて見直しをした。 お正月モノを年末に見ると、また一年が過ぎてしまったな、という感慨が生まれる。
ゆずちゃん先輩の魅力が詰まった一本。
動きはダイナミック。元気。頑張り屋。
日曜の昼くらいにやってたアイドル学園ものパロディも結構好き。
ゆずリリの関係性も見所。アイカツスターズ!の楽曲だとSTARDOM!が好きなのだけど、「憧れは次の憧れを生む」という歌詞が、ゆずとリリィの関係に見える。美しい。


02.SSSS.GRIDMAN(グリッドマン) #03 敗・北

正直、まだ咀嚼途中で、評価をどこにおいてやればいいのか分からないそんな作品ではある。
1話の劇伴の使い方、説明が適度に少なく静かでありながらちゃんと表情含めて押さえてくるのはやはりエヴァあたりが念頭にあるのか。
「パキパキとしたソリッドな感じのアニメーション」とでも表現するのがいいのかもしれない。
物語の仕掛けも興味深いし、キャラクターもあざと可愛い。
ボイスドラマの六花にしゃべらせるセリフが本編と違って生々しい女子高生っぽさが出てるのもリアリティ("リアル"ではない)を前面に出しているのかもしれない。
(実は上記の文は最終話前に書いていたのだが、最終話を見てまで見て、「リアルではない」に別の意味が生まれてしまったな、と思った。元が特撮であることの強い意味が生まれていた)

特撮のグリッドマン自体は幼い頃に見ていた記憶はあるが、話の筋は覚えていない。
人によっては、特撮版は生まれる前に放送されていた人もいるのだろう。
そのうえで特撮版を遡って見た人もいるのかもしれない。そうやって探りたくなる仕掛けも上手い。
私は特撮に対する造詣が少ないが、それでもパロディ含めて特撮やアニメといった文化がすごく好きな人が書いているのだなというのは伝わってくる。

どの話数も面白いのだが、3話を推したい。
特撮なのかアニメなのかというので、アニメっぽい気持ちよさが3話に出ていた。
画面全体、怪獣の吹き飛び方などに重量を感じる作りになっているが、特に3話はMAX GRIDMANが殴りにいくシーンの重みが強く出ている。
キャリバーさん周りのアニメーションの気持ちよさも際立っている。
女性キャラクター人気がインターネットでは目立つが、サムライキャリバーさんやアンチくんと言った魅力的なキャラクターがその片鱗を見せるのが3話というのもある。


03.軒轅剣 蒼き曜 第七話 錯綜之念(さくそうのねん)

台湾のゲーム軒轅剣シリーズのアニメ版。
スタッフは日本人。中国の物語文法が少しずつ感じられて良作。
実は1話や10話も選ぼうとしていた。
1話のよさは、開始直後の劇とか、主人公殷が宙に浮くシーンがすごくて、まるで糸で吊られているようでやはり劇を意識しているのかな、と思った。
ソースを失念したけれど、アメコミだと、超常の能力を得た人間は目が光る表現が使われることが多く、日本の漫画だとオーラのようなものをまとう表現が良くある、そして中国の超能力表現として、(舞台技術のように)宙に浮くというのがあるとどこかで読んだ記憶がある*1。 それが念頭にあって、見た瞬間に「これは糸で吊るのを意識しているぞ」となった。

中国の物語を読んでいると、人命に対する感性が少し違うらしく、封神演義安能務 訳)であればパカパカ頭を割られて死ぬシーンが多かったし、意地の悪いキャラクターの運命などについても凄惨とも非業とも呼べるような死を迎えることが多くて、この軒轅剣においても同じような感性の違いが見られる。
1話で龍澄に手を挙げた部下があっさりと首を斬られているのも中国の物語に感じる。

7話に話を戻す。
物語の面白さのひとつの方向として、登場人物たちひとりひとりが悪意を持っていないにもかかわらずそれぞれの思惑がすれ違ってしまうことがあるが、7話はタイトル通りでまさに錯綜だった。
そして物語自体が後編に向けてぐぐっと転換するタイミングでもあり、これはぜひ見て確かめて欲しい。

なお10話、近年まれに見るつらいアニメーションだった。
忘れた頃に差し込まれる雫のシーンが、ずっと耳に残る上手い設計だ。
これは軒轅剣全編を一気見してしまうとたぶんあまり感じ入ることはないだろう。
10話は見終わったあと時間を空けてから11話に移ってほしい。

最終話、それぞれがなにを望んで動いてきて、結果的に得たモノと失ったモノとを見比べたときに「どうしてこうなってしまったのだ」という気持ちと、彼ら彼女らの幸せについて考えてしまった。
天命に翻弄されるのもやはり中国の物語ゆえか。
あと、個人的には、2.5次元軒轅剣を待っています。


04.少女☆歌劇 レヴュースタァライト 第10話 されど舞台はつづく The Show Must Go On

近年(いつ?)、アニメ業界において舞台の重要性が増している。
円盤売り上げが少なくなっている分を補うべくなのか収益の枠組みが変わりつつある。
たとえばソシャゲへの導線が目立つのだが個人的に興味を持っているのが声優や俳優を使った舞台である。
アニメ作品を人が演じることで虚構と現実が溶ける瞬間が生まれるのかもしれない。

今回挙げたのは10話。
適わないと思いながら努力するその姿が好きで、たぶん自分がそういう才能というものを持っていない、という確信があるからこそ、舞台少女のきらめきに私自身が惹かれているのだと思う。
私も、観客としてキリンとして、舞台に立ち続ける少女たちを眺めていた。
アニメを見ていながら、舞台を見ているような気持ちになり、また舞台を見た人は舞台の記憶も混ざって複雑な感情になる。キャラクターへの共感も混ざりもはやよくわからない感情になるのだった。
これも第四の壁の壊し方なのだろうか。


05.宇宙よりも遠い場所 STAGE12 「宇宙よりも遠い場所

すべての話数を一つ一つ10選として挙げたい作品だった。
まだ他の人の10選を見ていないが、多分今年のこの企画で一位二位を争うものと言えばきっとSTAGE12「宇宙よりも遠い場所」だと勝手に思っている。
などといっていたら The New York TimesのBest TV Shows of 2018で海外部門を受賞していたようで、なるほど強かったのだなとなった。
「よどみの中で蓄えられた力が爆発して、全てが動き出す」
という1話冒頭のナレーションが、深く沁みていたからこその12話だったか。
挿入歌の使い方も本当に上手い。
ガシガシと刺してくる作りで、毎話泣いていたと思う。
この秋になってからいろいろな制作者のインタビューを見て、30代の男性すなわち私がしっかりとターゲットになっていたことが分かったのをどう受け止めて良いやら。
日向大好きなんだけれども好きなキャラクターの方向性がモロに分かる。


06.ゾンビランドサガ 【第9話】一度は尽きたこの命 なんの因果か蘇り 歌い踊るが宿命なら 親友への想いを胸に秘め 貫くまでよ己の SAGA

2018年の終わり頃にまたずいぶんと強い物語が出てきたな、という感じだった。
アニメ聖地の町おこしは一時期消えたと思っていたけれど、丁寧に組んだ物語はやはり人を引きつける。
物語に対する愛?真摯さ?そういったものの片鱗が見えることが嬉しいのだと思う。
ゾンビランドサガは、ゾンビじゃないと成立しない物語と、アイドルでないと成立しない物語の両方が上手く組み合わさっていた。
巽の阿呆な演技にゲラゲラと笑っていたらいつの間にか世界に引き込まれているという構成も強い。

1話の時点で、生き返ったとしたら知ってる人も出てくるだろうと思っていたが、8話段階ではゾンビになって人が甦ることがアニメ世界内ではあり得ないこととされているリアリティにいまいち納得できなかったけれど、9話のゾンビだからできること、ゾンビだから再び死ぬことなく戻ってこられる、そしてそれが当時できなかったことの再現になっていることまで見て、この物語は強いなと思った。
7人の個別回を1期12話で回しきるのは難しいのだろう、割り切りが見られる構成だった。
全員分出さないことで二期や劇場版も視野に入ったのかもしれない。
二話もあのラップで直前までは候補だったのだが、私が2号推しなので個別回の9話を。


07.ポプテピピック #07 ヘルシェイク矢野

アニメか?という突っ込みはあろうが、とにかくすごいモノを見た、という気持ちになった。


08.ヤマノススメ サードシーズン 十話「すれ違う季節」

もはや安定して見ていられる。
スタッフが我々を「裏切ることはないだろう」という信頼がある。
サードシーズンは、全体を通じてすれ違いを丹念に描いていたが、やはり一人作画の驚異もとてつもなかった。
少人数での作画になると、その手触りというかその人らしさが前面に出てきてとてもよい。
なので二話と迷ったのだが、十話の「すれ違う季節」を推す。
ひなたの寂しさが、画面の端々から感じられ、また、電車内の「ゆり」のカバンを持ち直す仕草や直前の手が揺れている作画に、生き生きとした様子を感じた。
そして後半の中心となるすれ違いの疑念の生まれ方。
あ、百合だ、そんな気持ちになる話数だった。


09.ゆるキャン△ 【第5話】二つのキャンプ、二人の景色

山梨の空気が感じられる、美しい物語だった。
一話ごとぐらいにキャンプと日常を行き来する構成がまさにゆるいキャンプという感じでいい空気。
OPのリンちゃんが少しずつ打ち解けていくちょっとした仕掛けもよかった。
3話のラスト、なでしこを呼ぶリンちゃんにやられてしまったのだが、

この独特の距離感が、しっかりとまとまったのが5話の夜空だった。
遠い空の下、それでも確かにつながっている。これが2018年の距離感なのかなとそんなことさえ思った。


10.若おかみは小学生! 第10話 「二人は親友!?若おかみ」

今年は映画「若おかみは小学生!」の話題を良く聞いた。
パジャマ姿のおっこがめちゃくちゃ可愛いのだけど、twitterで言及している人が少ないので特殊な見方をしているのだろうな、という気持ちになっている。
それでも、映画版と比較する形でテレビ版の考察をする人が多かったのでそれはそれで。
テレビ版、9話10話のピンフリがめちゃくちゃ可愛く、また20話のおっこがめちゃくちゃ可愛いのでとにかく全話見てもらいたい。
9話は登場時にテレビのこちら側で本当に、こう、撃ち抜かれたという表現がぴったりだった。

実を言えば昔からテンプレなキャラクター造形を敬遠してきた気持ちがあるのだが、 最近は「金髪ツインテツンデレもいいじゃないか」とおおらかな気持ちで見ることができるようになり、 ピンフリも、努力するお嬢様でツンケンしているけど心根が優しい様子でコロリとやられてしまった。
我ながらちょろい。
しかし話数としては10話を挙げる。
真月の芯の強さがラストに掛けてちゃんと見えるのがいい。



途中にも書いたが、アニメーションの生き残り戦略に多様性が増しているように思う。
テレビ配信ではなくインターネット配信しかり、音楽や部隊を含めたマネタイズを模索することも増えた。
海外でアニメスタイルストーリーテリングが広まるに従って、配慮も増えるものであるというのがNETFLIXなどから見えてくるところである。
文化は、いくつかの障壁によって分断され、その中での先鋭化することで特異なものとなり、時間を掛ける過程で文化としてより強固なものになっていくのだと思う。
こうしてアートスタイルが世界に広がっていくことがどういう変化になっていくのかは見守りたい。
スタイルとしての特徴を考えると、2018年は構成を強く意識した年だった。
一回こっきりの要素で毎週の視聴と考察を促して、SNSを介して人を舞台やコンサートへと導く仕掛けがよく見える気がしている。

選外でありながらよかったものをいくつか
- 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない 第8話 大雨の夜にすべてを流して→消える、の表現はSSSS.GRIDMANなどでもあったけど、余韻の残し方が難しい。これは道具を上手く使っていた。
- はねバド! 第2話 運動の後の肉は格別ッス!
- りゅうおうのおしごと! 第七局 「十才のわたしへ」
- ソラとウミのアイダ 9話 「浴衣でラクしい夏休み!」
- あかねさす少女 5話 「ヒーローの条件」
- LOST SONG 第12話 「始まりの歌」→正直なところ飛び道具だけど、リアルタイムでアニメを見る価値のひとつは間違いなくああいったところにある。

*1:20181230 少し反応があったので追記。ソースとまでは呼べない傍証くらいのものだが、 http://www.cinemart.co.jp/article/news/20160311000526_2.html 仙、神、妖、魔、鬼だから、飛べるのが当然! 飛べないのは人間だけです! と言うしかありません。実は、古くから伝わってきた中国の伝説の中で、仙人や神は雲の上に住んでいるので、出入りは飛ぶのが当然なことです。

同人誌のあとがきに追記するエッセイ

自分を含めたほとんどの人の、日々の関心からはすでに離れてしまった作品が、時おり心を掠めることがある。

その頃一緒に盛り上がった知り合いたちも、いつの間にか新しい話題の比率が増えて、特に言及することなくなってしまっている作品だ。
自分自身も時どき思い出して10分後には忙しさに取り紛れて忘れてしまっている、そういうことがある。
ある事象が、時が経つにつれて人の言の葉に乗らなくなることは、当然に起こることである。悲しんではいられない。変わることは悲しいことではない。時が経つことは誰かが止められるものではないのだから。
小説や映画が、歴史の中で残ったり残らなかったりすることを、「時の試練」と表現することがあるが、あるいはこれも「時の試練」の一種かもしれないとも思う。

別の話をする。作られてからほとんど他の人に読まれたことのない報告書が、この世には存在する。私も編纂に関わったことがある。いわば作られることがその時の目的で、広く読まれることを前提としていないものだ。
たとえば大学の卒業論文の多くも似た運命にある。それでも卒業にあたりレビューされるのでそれで十分存在意義を全うしたと考えられる。
知の営みにはおおむねそういう側面があるのかもしれない。大海に投げ込まれたボトルメールのようなもので、低い可能性とは知りながら、いつかどこかの誰かに届いてほしいというささやかな願いがこめられているのだ。そして、そういったものにたまたま触れたとき、その当時文書の編纂に関わった人々の営みや悩みが、読んだ自分に実感を持って立ち昇ってくることがある。

話はさらに飛び、アニメの話になる。 私が好きなコンテンツであるところの「放課後のプレアデス」は、2015年にテレビシリーズとして放送された作品である。これについては、もっと詳しいサイトがいっぱいあるだろう。いずれ自分の中でも消化するための記事は書きたいが、それは今日ではない。
年あたり200以上の新規のテレビアニメ作品が増えている現代に、三年も前に放送されたいちアニメの、さらにいち同人誌やブログエントリを見ること自体稀有なことである。
これを読んでいるあなたは、たとえば2020年の未来に(今は2018年だ)遅れてこのコンテンツにハマって二次創作を探している最中にウェブの片隅でよく分からないエッセイを不意に見つけたのかもしれない。あるいは昔好きだったコンテンツをなんらかの偶然で思い出して検索したのかもしれない。もちろん、まだ毎日このコンテンツを検索している人かもしれないが。

ここに来て、上記の3つの話が合流する。
先日「放課後のプレアデス」の二次創作小説「祈りは物理に従わない」を頒布した。
私は、この二次創作のなかで、作中の関係を想起させるだけでなく、作品と視聴者の関係を想起させたいと思っていた。
「遠い未来にたまたま物語に触れた会長ないし会長の仲間」という作中の関係のみならず「ブームが過ぎたアニメの同人誌を遅れて読んだ人」や「過去には好きだったけど今はほとんど言及することがなくなって、たまたま思い出して物語に触れた人」という作品と読者という関係も意識している。
前者の作中の関係については言うまでもない。作中の会長が、いずれ未来の中で「自分が覚えていない記憶に関する記録」に触れたときの気持ちを想像することになる(それができるほどの筆力があるかは疑問だが)。
後者について、昔一緒に同じコンテンツについて盛り上がっていたことに対する憧憬(のようなもの)が込められている。読んだ人が、少しでも当時盛り上がっていたときの感覚に近づいて欲しいというものだ。
それは、人によっては当時を"思い出す"ことになるのかもしれないし、人によってはその当時を"想像"することになるのかもしれない。実際のところ、それはどっちでもいい。遠く離れた過去に思いを馳せることは、どちらも似たようなものだからだ。
だから、きっとほとんどの人の人生には関係のない、ほとんど読まれることのない物語を、もしかしたら届いてくれるかもしれない、とささやかな願いを込めて綴っている。
実際、その同人誌だってたかだか40部程度しか頒布されていない。
このブログ記事を読んでいる人と同人誌を読んだ人の積集合なんてせいぜい5人程度だろう。

時間が経つにつれ、ひとり抜け、ふたり抜けているこのジャンルに、私はまだいる。たまたまかもしれないけれど、まだ私はここにいるのだ。
そしてそこで、読まれる可能性の低い物語を綴っている。
この立ち位置は、今回私が書いた物語における会長の立場に似ている。
だから、この物語は会長から未来の会長への物語であると同時に、私から同じファンのみんな(そしていつかの未来、この物語にたどり着いた同じファン)への物語だ、たぶん、きっと。

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